補給のうそ、ホント
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Vol.19エンデュランスパフォーマンスに有効なカフェイン摂取は適量であるべき
エンデュランススポーツに取り組む多くのアスリートがトレーニングやレース中にカフェインを摂取することはよく知られています。アイアンマン・トライアスロン・ワールド・チャンピオンシップに出場するアスリートではその73%がパフォーマンス向上を期待してカフェインを摂取していたとされています(DesbrowとLeveritt、2007年)。カフェインは、主にドリンクあるいはジェルから摂取されたようですが、使用者の半数以上(53%)はどれぐらいの量を摂取すればよいかを認識せずに摂取していたことが報告されています。 これまでに、カフェインには運動中に体脂肪の分解を高めて筋グリコーゲンを節約したり、交感神経系に作用して筋収縮力を強めたり、疲労や痛みを抑えたりするなどの効果のあることが知られています。また、副作用が少なく、運動中の摂取では利尿作用が抑えられるため、有効なエルゴジェニックエイドとして用いられてきました。 しかしながら、どれぐらいの量を摂取したらよいのかわからず必要以上に摂取した場合では、副作用や利尿作用による脱水のリスクが高まることがあるため注意が必要です(Zhangら、2015年)。カフェインに限らず、摂れば摂るほど効果が高まると考えるアスリートも少なくありません。カフェイン摂取は適量を守ることが重要です。 最近の系統的レビューでは、カフェイン摂取のエンデュランスパフォーマンスへの有効性を検討したこれまでの研究を統合して再評価(メタ分析)した結果、体重1kgあたり3-6mgのカフェイン摂取量が最もエンデュランスパフォーマンス(タイムトライアルのタイムや平均パワー)の向上に有効であることがわかりました(Southwardら、2018年)。体重1kgあたり3-6mgの範囲ではその有効性はほとんど変わらないようです。この範囲を超えて摂取すると胃腸の調子を崩したり頭痛などの原因にもなったりしますので注意が必要です。 レース中のカフェイン摂取を検討している人では、必ずトレーニングであらかじめ試しておくことが重要です。体重が60kgのアスリートであれば、180-360mgのカフェイン摂取が適量ということになります。ただし、これを一度に摂取するのではなく、分けて摂取することが大切です。コーダエナジージェルには1パック80mgのカフェイン入りのもの(コーラバニラ味、カプチーノ味、グリープラム味)があります。つまり、2パックと1/4から4パックと1/2のカフェイン入りジェルを糖質摂取のタイミング(60g/時間)と合わせて摂るとよいでしょう。また、血中のカフェイン濃度がピーク値に達するまでに、摂取後約45分から1時間ほどかかり、その効果は4時間から6時間程度持続するようですので、これらも考慮して摂取のタイミングを考えるとよさそうです。
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Vol.18糖質トレーニング3:糖質ピリオダイゼーション(2)
長時間の競技パフォーマンスの持続には筋グリコーゲンを節約することが重要です。そのためには、トレーニングや競技前の食事(カーボローディング)によって筋グリコーゲン貯蔵量を最大限に高めつつ、脂質を効率よく利用することが肝心です。しかしながら、競技時間が長い場合、やがては筋グリコーゲンの枯渇に近づきます。このことから競技中は糖質補給が必要となるのです。
しかしながら、競技中の糖質補給には多くのエンデュランスアスリートが抱える大きな問題、胃腸トラブルがつきものです。ウルトラマラソンランナーの60-96%が競技中に胃腸系に何らかの兆候を示すと言われています。運動を行うと活動筋に血流が分配され、胃腸への血流が低下します。脱水が引き金となる深刻な状況では、胃腸の虚血による腸管障害、炎症・腸内細菌の浸透による内毒素症が起こると言われています。また、運動によって生体にストレスがかかると、神経内分泌系や交感神経の作用により胃腸の運動性が低下します。
そして、ここに食物が介在することにより、吐き気、嘔吐、げっぷ、腹部膨満、腹部痛、下痢などの症状をきたします。これは運動誘発性胃腸症候群(Exercise-Induced Gastrointestinal Syndrome: EGIS)と呼ばれています。運動によって胃から腸へ食物の排出が遅延し、消化吸収が阻害されて起こります。特に運動時間が2時間を超え、運動強度が最大酸素摂取量の60%を超えてくるとEGISが起こりやすくなります。摂取した食物(頻度・量・種類・形状・濃度・味等)にも大きな影暑を受けます。
とはいえ、長時間にわたるエンデュランス競技では、競技中の補給が絶対条件です。EGISをできるだけ回避するには、脱水を抑えるとともに水分の過剰摂取に注意すること、最適な糖質摂取を計画すること、発酵性食品・食物繊維などを控えること、痛み止めのために非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を使用しないこと、トレーニングでレース中に必要な糖質補給を実践することなどが対策として考えられます。
前回のコラムで触れた「糖質ピリオダイゼーション」は、トレーニング中の糖質補給量をトレーニング内容に応じて調整することにより、筋グリコーゲンの合成能と脂質の利用能を高める一方で、レースで必要な糖質摂取量に胃腸系を適応させていくことを狙いとする方法です。レース前の調整期など3週間ほどの期間を取って繰り返し実施すると有効であると考えられています。
具体的には、糖質の摂取量を抑えて行うトレーニング(トレインロー(train low))、糖質の摂取量をレースで利用する量まで高めて行うトレーニング(トレインハイ(train high)、睡眠時間を利用した間欠ファスティング(絶食)(スリープロー(sleep Low))の組み合わせから構成されます。「トレインロー」では糖質が不足しているため自ずと脂質代謝が優位となり、その改善が期待されます。しかし、長期にわたって糖質の摂取量が抑えられると、糖質代謝に関連する酵素活性が低下することによる糖質利用能の減衰が起こり、トレーニング強度が低下してディトレーニング(脱トレーニング)に陥る可能性があります。その一方で、「トレインハイ」を実施することで、糖質代謝を促進してトレーニング効果を高め、また、レースで必要な糖質摂取量に胃腸系を適応させていくことで「胃腸トレーニング」を行うことができます。その間に行う「スリープロー」では、睡眠中に低糖質状態を作ることで脂質代謝向上を高めることを意図します。睡眠前の食事から12時間絶食することが最も有効とされていますが、翌日のトレーニング前には糖質を摂取することでトレーニング強度を維持することができますので、脂質代謝を高めつつ糖質トレーニングを行うことができます。
図に「糖質ピリオダイゼーション」の一例を挙げました。週に10~13時間トレーニンを行うサイクリストがモデルですが、1週間のトレーニングの中に4日かけて「トレインハイ」「トレインロー」「スリープロー」を取り入れます。これを3週間のピリオドの中で3回繰り返すと効果が期待できます。
例では、まず1日目のトレーニング前とトレーニング中に糖質摂取量を高めて(「トレインハイ」)、十分に糖質代謝を活性化できる状態で高強度でのトレーニングを実施します。トレーニング後も回復を促すために高糖食を摂りますが、夕食時は糖質摂取を控えめにします。夕食後から睡眠中、翌朝2日目まで「スリープロー」の低糖質の状態を保ち、そのままトレーニングを低強度で行い脂質代謝の向上を狙います。トレーニング後は再び高糖質に切り替え、夕食時も高糖食を摂ってグリコーゲンの合成を促し翌日に備えます。さらに3日目に高強度のトレーニングを行います。トレーニング前後は高糖食を摂りますが、トレーニング中、夕食は中程度の糖質摂取にします。そして、4日目にはトレーニング前・中の糖質摂取を控え低強度でトレーニングを行うことで、再度、脂質代謝の向上を図ります。トレーニング後はまた高糖質に切り替え、夕食時も高糖食を摂ってグリコーゲンの合成を促し翌日に備えます。
トレーニングを毎日続けて行えない場合や1日に2回行う場合など、アスリートによってはこの「糖質ピリオダイゼーション」の活用方法はさまざまだと思います。例を参考にご自身のトレーニング計画を模索してください。特に、レース中のエネルギー枯渇やEGISを頻繁に経験するアスリートにとっては有効になると思われます。 -
Vol.17糖質トレーニング2:糖質ピリオダイゼーション(1)
前回のコラムでは、「筋グリコーゲンの枯渇は疲労困憊の最大の原因」であることから、いかにこれを節約しながら競技を行うことができるかがロングディスタンス競技における成功のカギと述べました。筋グリコーゲンを節約する方法には大きく分けて3つあります。1つはいかに多くの筋グリコーゲンを競技に動員される筋肉に事前に蓄積しておくことができるか。2つ目には筋グリコーゲン以外の体内エネルギー源、特に脂肪をいかに効率よく利用することができるか。そして、3つ目に外部からいかにエネルギー源(糖質)、つまり糖質エネルギー食品の補給ができるかとなります。
競技前に筋グリコーゲンの合成を促し蓄積しておくには、日常のトレーニングから筋グリコーゲンの消費と合成を繰り返すことで関連する酵素の活性を高めておくことが必要です。そのためには筋グリコーゲン消費が促進される高強度インターバルトレーニングなどが有効です。これに加え、競技1週間前あたりからは、古くからその有効性が提唱されているようにカーボローディング(グリコーゲンローディング)が役立ちます(その具体的な方法は多様です)。より高いパフォーマンス、高温下での競技では筋グリコーゲンの消費がさらに亢進されますのであらかじめ備えておくことが重要です。
長時間の持久系競技では脂質を効率よく利用できる能力が必要であるとはこれまでにも知られているところですが、この脂質利用能が筋グリコーゲン節約のためにあるとまではあまり知られていないかもしれません。もっとも脂質の利用は糖質を利用する場合より、さらに多くの酸素を必要とするため、酸素摂取が制限される高強度の運動時には不向きです。ペース配分にも配慮する必要があります。ペースが不安定だと脂質利用を損ねてしまうことがあります。
筋グリコーゲン蓄積量をトレーニングによって、また競技前の食事によって最大限に高めておくことを前提にしても、競技時間が長時間になればなるほど、脂質への依存度を高めざるを得ません。有酸素トレーニングにより酸素摂取量を高めることで脂質を利用しながらでもハイペースを保てるようになりますが、脂質の代謝には必ず糖質が必要であることから(特に筋中脂質の消費は筋グリコーゲンの消費を促します)、競技時間が長くなるとやがては筋グリコーゲンの枯渇に近づきます。そこで、糖質エネルギー食品による糖質補給の重要性が出てくるのですが、筋グリコーゲンが減ってから慌てて糖質を摂取するのではなく、競技全体を通してこまめに摂取しておく必要があります。1時間に60グラムの糖質摂取が筋グリコーゲンの消費率を最も抑えるとの研究報告もあります。
このように、高い競技パフォーマンスを持続させるにはグリコーゲン合成・貯蔵を促進しつつ、脂質利用能を高めて体外からの糖質補給により筋グリコーゲンの消費を節約することが求められます。ここに新しい概念として、「糖質ピリオダイゼーション」という考え方が有効になります。トレーニングを構造的に期分けするピリオダイゼーションはよく知られているところかと思います。
一般にピリオダイゼーションとは、目標レースまでのトレーニングをいくつかの期間に分け(期分け)、トレーニング時間と強度を目的的に増減させることで、疲労や故障を回避しつつ目標レースでのパフォーマンスを最大限に引き出す考え方です。これをエネルギー供給の最適化に応用するのです。
次回、「糖質ピリオダイゼーション」の具体例を挙げながら説明したいと思います。 -
Vol.16糖質トレーニング1:筋グリコーゲンの重要性
持久系競技のトレーニングの目的と言えば、主に最大酸素摂取量(単位時間あたりに活動筋が利用できる酸素の最大量=単位時間あたりの最大エネルギー生産量)、乳酸性作業閾値(産生された乳酸を除去できる最大の強度)、エコノミー(エネルギー効率=単位酸素量あたりのエネルギー生産量)の三大資質を高めることに尽きます。しかし、ロングディスタンスのトライアスロンやウルトラマラソンなどのように、4時間以上の時間を要する長時間競技においては、これらを高めておくだけでは十分なパフォーマンスを発揮できないことがあります。実はこれらのトレーニングに加えて、エネルギー供給を高めておく必要があるのです。 「エネルギー供給を高める」とは、単にエネルギー源の補給を行えばよいということだけではありません。エネルギー源(糖質)の補給も重要なエネルギー供給戦略の一つの要素ですが、その前に「脂質の利用」「体内糖質の利用」について考えなければならないのです。 脂質を利用してエネルギーを作り出す働きは、各種目の有酸素トレーニングを通じて高めることができます。脂質は、皮下脂肪などとして体内に無尽蔵なほど貯蔵されていますので、長時間のロングディスタンスの競技にはその利用が不可欠です。ただ、脂肪を消費してエネルギーを産生するには、糖質消費と比較してより多くの酸素を利用する必要がありますので、上述のエコノミー(エネルギー効率)を損なうことがあります。 その点、体内糖質である筋や肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを利用することができれば、より効率よく、より速くエネルギーを産生することができます。ただし、運動強度(スピードやパワーなど)が高まれば筋グリコーゲンの消費が高まります。運動を行う環境の気温が上がることも筋グリコーゲンの消費を高める一因です。筋グリコーゲンの枯渇は疲労困憊の最大の原因です。活動筋内のグリコーゲン貯蔵量には限りがありますので、競技終了前にこれが枯渇してしまうと最後まで競技を続けることすら困難になってしまいます。 したがって、筋グリコーゲンを効果的に利用する一方で、いかにこれを節約しながら競技を行うことができるかがロングディスタンス競技における成功のカギです。これは長時間にわたる競技に限らず持久系競技全般にも当てはまります。糖質補給は、スピードやペースなどの一定の運動強度を保つ上で脂肪利用だけでは不足するエネルギー産生と、著しい減少あるいは枯渇がペースダウンや疲労困憊の原因となる筋グリコーゲンの節約のための補完の役割を担うもので、競技時間が長くなればなるほどその重要性が高まります。 次回、エネルギー供給最適化のための「糖質トレーニング」についてご紹介したいと思います。お楽しみに!
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Vol.15アイアンマン補給計画(Dr.Hの例)
11月中旬、マレーシア・ランカウイ島で開催されたアイアンマンに出場しました。雨と風、陽射し、暑さの中での厳しいレースでしたが、最後まで走り切ることができました(結果は総合77位・年代別5位)。 ロングのレースではエネルギーと水分補給の良し悪しが大きくパフォーマンスに影響します。レースに先駆けて補給プランを検討しましたが、目標ペースやタイムからどれぐらいの糖質補給量が必要かあらかじめ推算するところから始めました。
まずレース全体で消費するカロリーが約8,000kcal、その70%(5,600kcal)が糖質から供給されると仮定しました。またレースまでの普段の食事から体内に貯蔵されているグリコーゲンが約2,600kcal、レース当日の朝に摂取する糖質を約1000kcalとして、残り(2,000kcal)をレース直前からレース終了までコーダによって糖質摂取することとしました。結果、レース直前・レース中では約2,000kcalの糖質摂取が必要となり、コーダ1個には約120kcalの糖質が含まれますので、レース直前と、スイムを除くレース中に約17個のコーダを摂取すればよいことになります。 これらに基づいて実際のレースでは次のように補給を実行しました。 ・スイムスタート30分前にコーダエナジージェル(ワイルドベリー味。以下コーダ)1個摂取。 ・スイムウォームアップ後コーダ1個摂取(スタート15分前)。 ・バイクスタート30分後から30分ごとに、バイクボトルに入れたコーダ1個分ずつ。以降、バイク終了まで計11個摂取。 ・バイク序盤は雨のため涼しく水分摂取は少なめ。中盤から暑くなってきたので、毎30分のコーダ摂取の合間に、喉が渇いたと感じた時のみ水分摂取。 ・水分はエイドステーションのスポーツドリンクあるいは水を摂取。前半の水分摂取量は500ml/時間程度。 ・暑くなってきた後半は水を頭からかぶり、汗の量も多くなってきたので用意しておいたナトリウム補給用のコーダエレクトロライトパウダーをコーダ摂取の合間に適宜一口ずつ水といっしょに摂取。エレクトロライトパウダー(10本)は飲みやすいように水で少し薄めてフラスクボトルに用意。
このようにレース30分前からバイク終了時(スタート後、約7時間経過)までに13個のコーダ摂取となり、ほぼプラン通り、1時間あたり56gの糖質補給を行いました。バイク終了時のエネルギーの充足感や胃腸の調子に違和感はなく、順調にランに臨むことができました。続くランでの補給は次の通りです。 ・ランでは暑さとの闘いが予想されたので水分摂取と体温を下げる工夫を徹底。 ・すべてのエイドステーションで水を頭からかぶり、提供された水のペットボトル(200ml程度の大きさ)を2個取って、1個は手に、1個はウェアの中に入れて、約2キロごとの次のエイドまでつなぐ。 ・持って走った水ボトル1個は、走りながら、頸動脈に触れるようにしてウェアにはさんだ肩のスポンジにかけて体温上昇の抑制を試みた。 ・もう一個水ボトルはバイク中同様にエレクトロライトパウダーを一口、口に含んで、それを喉に流し込むために使用。 ・ランでは飲み過ぎによる後半の胃腸の不快感を避けるため、水分は喉の渇きに応じてエレクトロライトパウダーと一緒に摂取するのみで、発汗量より摂取量は少なくおよそ600-700ml/時間ぐらいだった(発汗量は1000ml/時間以上と推測)。 ・冷たい水を飲みたいときもあったが、口の中に含むだけでほとんど吐き出すことにした。これにより胃の中に水がたまることもなく、エレクトロライトパウダーと水分補給、水浴びと肩のスポンジによる体の冷却で暑さ対策を行った。 ・エネルギー摂取についてはコーダを4個フラスクボトルに入れて持って走ったが、1時間に1度、1個分摂取(30g/時間の糖質摂取)。胃腸の調子は非常によく、むしろ一時的に軽い空腹感があるほどだったが、コーダを摂ることで空腹感はすぐに消失したため、水分摂取と体温を下げることに集中することができた。 ・ラスト10キロではペースも上がったが、心拍数などから体感体温も安定しているようだった。終盤ではエレクトロライトパウダーを飲みきり、バイク後半から通じて、800mg/時間のナトリウムを摂取したことになった。コーダはラン中4個の摂取。 今回の酷暑下のレースでは、レース前の食事を通じたグリコーゲン貯蔵(カーボローディング)がおそらくうまくいっていたことに加え、バイク中のエネルギー補給が有効だったこともあって、ランではエネルギー摂取(バイクとランでプラン通りコーダ17個摂取)と合わせて水分とナトリウム補給が特に重要となりました。また、体温の上昇を発汗や水分補給だけでは抑えきれないような状況では「体を冷やす」工夫が必要になってくることも確認できました。 エネルギーと水分・ナトリウム摂取については、これまでにセミナーやコラムなどを通じてお伝えしてきた通りの基本的かつシンプルなものですが、今回に限らず、これまでに40回以上アイアンマンを走ってきた経験からも改めて確信のもてる補給を実践することができました。今後もセミナーやコラムなどを通して、さらに実践的な補給方法についてみなさまにお伝えしたいと思います。 -
Vol.14闘うための糖質「マルトデキストリン」
コーダエナジージェルに含まれている糖質は多糖類に分類されるマルトデキストリンです。マルトデキストリンは単糖であるグルコース(ブドウ糖)がつながった構造をしていてグルコースポリマー(重合体)とも呼ばれることがあります。消化されやすく、消化された後はグルコースとして腸から素早く吸収されます。同じ量をグルコース単体で摂取するより腸の不快感や下痢などの原因を引き起こさずにすみ、水分の吸収もグルコースよりマルトデキストリンが含まれたドリンクのほうが早くなるといった特徴を持っています。このようなことから以前からスポーツエネルギー補給食にはマルトデキストリンが用いられることが多いようです。
マルトデキストリンの有効性については古くから研究されており(Massicotteら、1985年)、運動中はグルコース同様に活動筋細胞に取り込まれエネルギー源として利用されます。マルトデキストリンの摂取により体内に貯蔵されているグリコーゲンの利用を節約することができパフォーマンス維持に有利と考えられます。
運動時に使用されるエネルギー食品に含まれる糖質にはグルコースやマルトデキストリンのほか、フルクトース(果糖)、スクロース(しょ糖)などがあり、これらが組み合わされて含有されることもあります。腸管での吸収経路や吸収速度が異なり、血液中の糖濃度やインスリン濃度の応答も異なるため、運動中のエネルギー源としてグルコースやマルトデキストリンとはまた違った利用のされかたをします。これにはメリット、デメリットがあり、その点に留意した上で活用するとよいでしょう。
また、グルコースやマルトデキストリンをドリンクで摂取する場合はその濃度については十分に注意する必要があります。8%以上の高糖質濃度では腸での吸収が阻害され腹痛の原因となるほか、水分の吸収も遅れ脱水を助長することになりかねません。グルコースやマルトデキストリンを固形物やジェルで摂取する場合は水分で流し込むのではなく、糖質摂取と水分摂取を分けて行うことで腸での吸収の妨げにならないように留意する必要があるでしょう。また、果糖を摂取する場合、グルコースやマルトデキストリンと比較して、腸での吸収が緩やかになるため、これが多く含まれることで腹痛やお腹の不快感につながる可能性もありますので注意が必要です。
このように、運動時のエネルギー維持には糖質補給が欠かせず、中でもマルトデキストリンは最も基本的な糖質と言え、安定して有効な働きをもたらすため、安心して実戦で使える「闘うための糖質」と言うことができるでしょう。 -
Vol.13栄養補給トレーニング ~胃腸はトレーニングできる!?
胃腸は糖質や水分を生体内に運搬する上で非常に重要な役割を果たしています。特に競技時間が数時間以上に及び補給が必須となる持久系スポーツにおいてはパフォーマンスに大きな影響をもたらします。前回のコラムでも述べたように、ウルトラマラソンやロングのトライアスロンでは、80-90%のアスリートに胃腸系のトラブルが引き起こされると言われます。これは、暑さや競技時間、脱水、過剰な糖質および水分摂取、脂肪やたんぱく質、食物繊維等の摂取などが胃腸に過度の負担をかけることと関係があります。引き金となるこれらの要因に気を付けることは胃腸の負担を軽減することになりますが、それでも競技を行う上で最小限必要な補給を行うだけで胃腸の調子を崩してしまうアスリートも少なくありません。胃腸の負担を軽減することに留意する一方で、レースに必要な糖質・水分補給を行うことを両立させることは持久系アスリートにとって非常に大きな課題です。
ところで、バラエティ番組等で取り上げられるように、世間には「大食い選手権」、「フードファイト」といったコンテストが開かれています。比較的小柄な女性がとんでもない量の食べ物を短時間で平らげる様子には驚かされます。ただ、大食いと言ってもコンテストに出る人はそれなりの「トレーニング」を行っているそうです。たとえば、普段から少しずつ飲む量、食べる量を増やしながら胃の拡張性を高める工夫を繰り返して行っています。事実、これを数週間続けることで胃の拡張性が高まって、より多くの食物を胃に入れることができるようになり、また胃の満腹感も解消されるようです(Jeukendrup、 2017年)。
レースに必要な糖質・水分補給を行うことが胃腸の不快感を引き起こすからといって、必要量を摂取できなければパフォーマンスに影響が出ます。実は、大食いとまではいかないものの、レースで必要な栄養摂取ができるよう普段のトレーニングから少しずつ補給量を増やしていく「栄養補給トレーニング」が有効とされています。徐々に胃の拡張性が高まって胃の不快感が減少すると考えられるからです。 これはまた、水分や糖質の胃から腸への排出を高めることにもつながります(Jeukendrup、 2017年)。トレーニング中だけでなく、日常の食事でも糖質摂取量を増やすことで胃からの排出が高まります。これは、3日から2週間程度、糖質摂取量を増やすことでもたらされますが、胃排出を抑制する小腸の糖質に対する特異な制御メカニズム(神経系やホルモン)における適応と考えられています。
また、トレーニング中の糖質摂取量の増加による「栄養補給トレーニング」は小腸(腸管腔)における糖質の吸収メカニズム(輸送体)の働きを高めてくれます。これは胃の不快感解消につながり、また糖質だけでなく水分の吸収も高まるためパフォーマンスに有効となります。
このように持久系アスリートに多い胃腸系のトラブルは、その原因(脱水、過剰な糖質および水分摂取、脂肪やたんぱく質、食物繊維等の摂取など)に留意するだけでなく、「栄養補給トレーニング」によって胃腸の働きを高めておくことで改善される可能性があると考えられます。特に、普段のトレーニング中の糖質摂取量が比較的少ないアスリートや糖質制限を行っているアスリートにおいては有効な手段と考えられています。逆に「栄養補給トレーニング」を行っていないアスリートがレース本番で、必要量とはいえ、いきなり多量の糖質や水分を摂取しようとすればトラブルが起こることは当然と言えるかもしれません。
これまで胃腸は鍛えられないと考えられていましたが、トレーニング中の飲む量・食べる量を増やす、レースで使用する補給量でトレーニングを行う、食べた後すぐにトレーニングを行う、普段の食事中の糖質補給量を増やすなどによって「胃は鍛えられる」と最近では考えられています。レースで使用するエネルギー補給食などはレースまで取っておくのではなく、日ごろのトレーニングから積極的に使用して準備しておくことが大切でしょう。 -
Vol.12糖質補給:エンデュランススポーツ成功のカギ
ウルトラマラソンやロングのトライアスロン、トレイルランなどを満足のいくレースにするには、レース中の適切なエネルギー・水分補給が大きなカギを握っていると言えます。ウルトラマラソンのような長丁場のレースを志すランナーの中には、レース中の体脂肪利用を促すことでパフォーマンスを高めようと、普段のトレーニングからレース中の補給まですべて低糖質食を実施している人も少なくないようです。
ところが、エリートウルトラランナー(3名)(100マイルレースの平均ベストタイム16.7時間)を調査した研究(Stellingwerff、2016年)によると、彼らが1年間に出場した16レース(ウェスタンステイツ・エンデュランスランなど。内8レースで優勝)での平均糖質摂取量は1時間あたり71グラム(1162グラム/レース)となり、レース中に摂取した総カロリー5530kcalの約85%を糖質補給によりまかなっていたことが示されています。つまり、100マイルに及ぶウルトラマラソンでのエネルギー補給はやはり糖質を主体に摂取することがエリートランナーの戦略となっているようです。
これまでにもこのコラムで述べてきたように、運動中のエネルギー補給は糖質摂取を主体に1時間あたり60グラムを摂取量の目安にすることが小腸での吸収やグリコーゲンの節約において有利であり、これによってパフォーマンス維持が期待できます。上述の研究では1時間あたりの糖質摂取量が70グラムを超えていましたが、どれぐらいの量が適量なのかは運動環境の違いや個人差もあることから、実際に試してみて胃腸の状態やパフォーマンスを確認するなどが必要です。
一方で、ウルトラマラソンやロングのトライアスロンではレース中に80-90%のアスリートが胃腸系に何らかの症状をきたすとこれまでに報告されています(Wardenaarら、2015年;Stuempfleら、2016年;Pfeifferら、2012年)。この原因はさまざまですが、暑さや競技時間、脱水、過剰な糖質および水分摂取、脂肪やたんぱく質、食物繊維の摂取などが挙げられます。普段の生活やレース前の胃腸のコンディションによっても影響を受けます。また、トレーニング量にも関係があるかもしれません。100マイルレースに出場したウルトラランナー(19名)を調べたこれまでの研究(Glaceら、2002年)では、半数に胃腸系のトラブルが発生しましたが、エネルギー補給や水分補給とは何ら関係が見られませんでした。むしろトレーニング量が少ないランナーほど胃腸系の症状をきたす傾向のあることが指摘されています。
このように、長時間にわたるエンデュランススポーツでは糖質を主体としたエネルギー補給が必要となり、この成否がレースパフォーマンスに大きく影響します。普段の十分なトレーニングに加え、エネルギー補給に影響を与えるさまざまな要因を取り除くことが補給戦略成功のカギと言えそうです。 -
Vol.11辛いときこそカフェインの助け
朝の一杯のコーヒー。習慣的にコーヒーを飲む人にとって目覚めのモーニングコーヒーは欠かせません。コーヒーに含まれるカフェインが交感神経系に作用して脳を覚醒してくれます。カフェインには体脂肪の分解を促進してグリコーゲンを節約する働きや疲労感を軽減する鎮静作用などのあることがこれまでの研究で知られており、カフェインの運動パフォーマンスを高める効果が期待されます。
実際、ロングのトライアスロンやウルトラマラソンなどではカフェインを摂取するアスリートも少なくないようです。特にレース後半でカフェインを摂取することはペース維持や後半の「踏ん張り」をサポートする目的として有効と言えるかもしれません。ロングや高強度のレース後半では活動筋のグリコーゲンが著しく減少している場合がほとんどです。筋グリコーゲンの枯渇はパフォーマンスを大きく損なう原因です。レース後半の筋グリコーゲンの減少はパフォーマンスの低下をもたらします。
これまでの研究では、たとえ筋グリコーゲンが減少してもカフェイン摂取によりパフォーマンスが回復したことが報告されています(Laneら、2013年)。この研究では、トライアスリートらにあらかじめ100分間のサイクリングで筋グリコーゲンを消費させておいた上で40分間のパフォーマンステストを行わせましたが、筋グリコーゲンが減少した状態では、正常な状態と比較してパフォーマンス(パワー)が8%程度低下してしまいました。
しかし、このような状態でもパフォーマンステスト前にカフェインを体重1kgあたり3mg摂取することによってパフォーマンスを3.5%回復させることができました。筋グリコーゲンが十分にある状態まで完全にパフォーマンスを回復させることはできませんでしたが、カフェインの摂取により脂肪酸の消費が高まり、これが筋グリコーゲンの減少を補いエネルギー消費を維持したと考えられています。
このように、ペースや運動強度の維持が困難になるレース後半などにカフェインを摂取することによって、それらの低下を補ってくれる可能性があると言えそうです。また、体脂肪の消費を促し、筋グリコーゲンを節約するためにもカフェインの活用が有効と言えるでしょう。
ただし、通常、体重1kgあたり3mgから6 mgが適当とされており、レースでの使用の前には必ずトレーニングであらかじめ試しておくことが大切です。また、摂れば摂るほど効くものでもなく、1日あたり300-400 mg以上の摂取は胃腸の調子を崩したり頭痛などの原因にもなったりしますので摂取には注意が必要です。コーダのフレーバーの中にはカフェインが80mg含まれているものがあります。たとえば、体重が60キロのアスリートであれば、180mg-360mg程度のカフェイン摂取が有効ですので、カフェイン入りコーダを3個から4個程度摂ればカフェインの効果が期待できると言えそうです。 -
Vol.10運動中の適切な糖質摂取量は!?
マラソンシーズンが盛り上がりを見せている中、少しずつ温かい日を増え始め、走ったり自転車に乗ったりするにはちょうどよい季節になってきました。汗の量も少しずつ増え、長時間の運動時は糖質補給に加え、水分や電解質(ナトリウム)補給もより重要になってきます。
運動中に消費されるエネルギー源の主体である糖質は、血中のブドウ糖(血糖)、筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲン、そして口から摂取する糖質が主なものとなります。運動中、血糖が筋肉に取り込まれて利用され血糖値が下がると、肝臓グリコーゲンをブドウ糖に変換して血中に放出し血糖が維持されます。筋肉内に存在するグリコーゲンは活動する筋肉で直接利用されるため即効性が高い一方、消耗すると疲労感が強くなりパフォーマンスに影響が出ます。しかも、血糖やグリコーゲンの体内量には限りがあることから、運動時間が長くなると外からの糖質摂取が不可欠になります。
適切に糖質(ブドウ糖)摂取を行って血糖を維持することができれば、体内のグリコーゲンを節約することができます。これによって、グリコーゲンの枯渇を防ぎ、疲労を抑えてパフォーマンスを維持することができます。
では、どれぐらいの糖質(ブドウ糖)を摂取すればよいのでしょうか。これまでの研究では、1時間に60グラム(1分間に1グラム)のブドウ糖摂取は、同30グラム、90グラムの摂取と比較して、2時間の運動における筋グリコーゲンの消費を抑える節約効果があったと報告されています(Wallisら。2007年)。最近の研究では、1時間に60グラムまたは75グラムのブドウ糖摂取を行ったところ、後者ではかえって運動中(2時間)の筋グリコーゲンの消費が高まりパフォーマンスに影響が出たことが示されています(Kingら、2018年)。60グラムの糖質はコーダエナジージェル約2個分に相当します。また、1時間に20グラム、39グラム、64グラムのブドウ糖摂取による効果を比較したところ、運動中(2時間)の肝グリコーゲンの消費量は同20グラムで最も多く、逆に同39グラム、64グラムでは消費が抑えられパフォーマンスが高かったことが確認されています(Newellら、2017年)。
このように、運動時間が2時間を超える場合は糖質(ブドウ糖)摂取が必要ですが、闇雲に摂取すればよいわけではなく、多過ぎても少な過ぎても効果が低下する点に留意して摂取することが大切です。ブドウ糖摂取の基本は、これまでの研究により1時間に60グラム(1分間に1グラム)が適量と考えられますが、実際に試してみて胃腸の状態を確認するなど、運動環境や個人差に配慮して補給戦略を考えるとよいと思います。 -
Vol.09ジェルによる糖質摂取は効果的!?
レース中の糖質補給は、その距離や競技時間が長くなればなるほどもはや常識です。では、どんなもので糖質補給を行っているかというとこれは人それぞれ。ドリンクタイプの飲料で摂取する人もいれば、バーのような固形物で摂取する人もいます。最近はジェルタイプのものを利用する人が非常に多くなってきました。あるいは、これらを組み合わせて摂る人も多いようです。
ドリンク、バー、ジェルではどのタイプの糖質補給食が有効なのでしょうか。糖質補給を行う目的では効果はほとんど変わらないように見えますが実際にはどうなのでしょうか。昨年発表された研究報告では、12名のよくトレーニングされたサイクリストに、ドリンク、バー、ジェル、ミックス(3つの組み合わせ)の何れかを摂取(運動中20分ごと。1時間あたり80グラム)させたときのそれぞれの効果について比較しています(GuillochonとRowlands、2017年)。糖質摂取のタイプによる効果の違いは、140分間の最大運動時のパフォーマンスと胃腸の状態について比較評価されました。結果、パフォーマンス(最大パワー)が一番高かったのはジェルで、バーが最も低いことが示されました。ミックスもバーに次いで低い値を示しています。また、バーはジェルと比較して、吐き気や胃の膨満感、腹部けいれん、主観的疲労感が強いこともわかりました。
このように、糖質補給食のタイプによってパフォーマンスや胃腸への負担が異なるようです。中でもジェルが最もパフォーマンスへのマイナスの影響が少なく、また胃腸への負担も小さいことが考えられます。固形物のバーだと消化や吸収により多くのエネルギーと時間を要するため胃腸への負担が比較的大きくなり、またドリンクだと同量の糖質を摂取するために多くの水分も同時に摂取することでやはり胃腸への負担が大きくなることが関係していると思われます。
レース中の胃腸への負担はパフォーマンスに影響をもたらします。長距離のレースでは、糖質補給が欠かせませんが、その方法を誤るとパフォーマンスが損なわれ、それまでのせっかくのトレーニングが台無しになることもしばしば見受けられます。上述の研究では、ジェルタイプの糖質補給食の優位性が示されていますが、ジェルの摂取においても適切な方法で行うことが必要です。ジェルを摂ると口の中が粘ついて気になることから、同時に水分を必要以上に摂ってしまうことがあります。これでは、濃度の高いスポーツドリンクを摂取したことと同じになり、ジェルの優位性を生かせないばかりか、かえって胃腸への負担が大きくなり、結果、パフォーマンスを損なうため注意が必要となります。ジェルを摂取する際には、口をすすぐ程度の水分摂取は問題ありませんが、それ以上の水分摂取はタイミングをずらして行うことがジェルの有効性を生かすことにつながります。 -
Vol.08運動時のアミノ酸摂取は有効か
マラソンシーズン本番です。愛好者の多いマラソンですが、規模の拡大をもたらした一時的なブームは去り、今は安定した人気の中で年々経験を重ねるランナーも増えてきているようです。マラソンに関する情報も膨大なもの。栄養補給に限っても、とても多くの情報がインターネット上に満載です。情報が多すぎで何をどれだけ摂取したらよいのか正しい判断ができなかったり、あれもこれも必要に思えて気がついてみるとさまざまな種類の栄養素を摂っていたりなど、栄養補給についての考え方をかえって複雑なものにしているようです。
たとえば、ランナーにも人気のある栄養素のひとつにアミノ酸があります。30年ほど前までは、調味料か旨みの成分ぐらいとしてしか認識されていませんでした。一部、「たんぱく質合成に不可欠な栄養素」との理解からボディビル系の愛好者らがサプリメントとして摂取を始めていたぐらいでした。
しかし、国内メーカーの開発により90年代中盤あたりから比較的飲みやすいパウダー状のものが製品化され、また用途もそれまでのボディビル系から持久系スポーツへも広がりを見せるようになり、メーカーの影響力や国内研究者の論文発表等もあって、現在では国内の多くの持久系アスリートにまで「パフォーマンスに役立つ栄養素」としての認識を高めるに至っています。
立場的に「アミノ酸って本当に効くの!?」といった声を耳にすることがよくあります。果たして、アミノ酸はパフォーマンス向上に有効なのでしょうか?高強度の運動は筋に損傷を与え、その修復のために筋たんぱく質の材料であるアミノ酸を運動後に摂取することは必要です。これがトレーニング適応を引き出すという意味ではパフォーマンス向上に有効と言えますが、一般的に多い使い方としての「運動中」の摂取についてはどうでしょうか。
これまでの研究で、100kmウルトラマラソンにおけるアミノ酸サプリメントの筋ダメージへの効果が検討されています(Knechtleら、2011年)。ランナー28名を摂取群と非摂取群に分け、摂取群はレース前、コース中全17ヶ所のエイドステーションで合計52.5g(5g/時間)のアミノ酸サプリメントを摂取しました。結果、完走時間だけでなく、筋損傷のマーカーとなる血液データや筋痛の主観的評価にもアミノ酸摂取による違いが見られなかったようです。
また、今年発表された系統的レビュー(システマティックレビューとも言われ、過去の関連研究論文の中で研究方法が一定基準以上のものだけを集めて包括的に分析評価する研究方法)では、アミノ酸(BCAA)が筋損傷の軽減に有効かどうか吟味されていますが(FouréとBendahan、2017年)、これまでの多くの研究の総括として高強度運動による筋損傷へのBCAAサプリメントの予防・軽減効果は乏しく、裏付けとなる根拠は見当たらないとしています。
過剰に摂取されたアミノ酸はアンモニアの生成を促し、生体にとって有毒なアンモニアは肝臓で水溶性の尿素に変換された後、尿として排泄されます。このため、肝臓や腎臓に負担をかけやすく、また脱水を引き起こしかねません。上述の研究(Knechtleら、2011年)でも、アミノ酸摂取群では血中への尿素の排泄が多く、またこれが多いほど完走時間が遅くなる相関関係が示されています。
アミノ酸摂取の運動からの回復期における有効性についてはたんぱく質の摂取同様、古くから確立されていますが、運動前、あるいは運動中については有効性を示す根拠が不十分と言えそうです。ただ、アミノ酸と一言で言っても、生体たんぱく質の合成に必要なものだけでも20種類あります。今後、これらの組み合わせによっては有効性が示されるものもあるかもしません。評判や人気だけで闇雲に摂取を試みるのではなく、その前にできるだけシンプルで正しい情報に目を向ける習慣もトレーニングと合わせて実践していただきたいと思います。 -
Vol.07アイアンマン・マレーシア補給戦略
すっかり寒くなりました。11月に開催されたアイアンマン・マレーシアに出場しましたが、現地は夏そのもの。当然、水分補給もエネルギー摂取も夏のレースを想定した戦略になります。
これまで各地のコーダセミナーでもお話してきたとおり、エネルギー・水分補給の3つの原則:①エネルギーは、1時間あたり60gを上限に体重1kgにつき1gの糖質のみを摂取する、②水分はのどの渇きに応じてナトリウムと同時に摂取する、③糖質と水分は同時に摂取しない、に従って補給を行いました。
具体的には、スイム中は何も摂取ができないため、スイム1時間前からにコーダエナジージェルを30分ごとに1個、合計2個(=約60g)を摂取し糖質の体内貯蔵を満タンにしてスタート。バイク中は、あらかじめバイクボトルに少量の水を加えて口から出やすいように用意したコーダエナジージェルをやはり30分ごとに1個(1時間で2個=約60g)、5時間40分のバイクパートで合計11個摂取しました。
水分摂取は適宜のどの渇きに応じて行い、フラスコに用意したコーダエレクトロライトパウダー(10本飲みやすいように水で薄めたもの)を少量ずつ口に含み、水分といっしょに摂取しました。
ランでも基本は同様です。フラスコに用意したコーダエナジージェル(カフェイン入り)をランスタート1時間後から摂取を開始し、その後30分ごとに1個(1時間で2個=約60g)、3時間40分のランパートで合計4個摂取。水分とナトリウム摂取も同じく、エイドステーションで手に入る200ml程度のペットボトル入りの水にコーダエレクトロライトパウダーを1本程度ずつ混ぜて摂取しました。
結果、アイアンマントライアスリートでは90%が体験すると言われている胃腸系の不快感はまったくなく、しかも同じエイジのアスリートと何度も抜きつ抜かれつのレース展開ではエネルギーと集中力を最後のゴールスプリントまで持続させることができました。胃腸系のトラブルを回避しエネルギーを持続させることができたのは、上述の3つの原則をシンプルに守ることに徹したからですが、コーダエナジージェルとコーダエレクトロライトパウダー、そして水分以外はいっさい摂取せずに通したこと、摂取目標を定めて過剰摂取を回避したことも好影響をもたらしたのだと思います。
目標としていたアイアンマン・ワールドチャンピオンシップ(ハワイ島コナ)の出場権の獲得は次回のレースに持ち越しとなりましたが、今回のようなハードなレース展開でもこの補給戦略が正しいことをますます確信することができました。また、アスリートのパフォーマンスをエネルギー面から支えるといったエネルギー補給食の本来のミッションを遂行する上で、コーダがいかに適任であるかを再確認した今回のレースとなりました。 -
Vol.06この秋「グリコーゲンタンク」を満タンにしてレースに臨みましょう
すっかり涼しくなり、スポーツを行うには最適な季節となりました。「スポーツの秋」ですね。この秋も各地でランニングなどの大会が多く開催されています。
さて、10月に開催されたある100キロウルトラマラソンに初めて挑戦するランナーから相談を受けて、栄養補給のアドバイスを行いました。フルマラソンの経験は少なくないものの、栄養補給については常に試行錯誤されていたようで、毎回、胃腸の調子を崩していたとのことでした。
完走に向けてのトレーニングの中では、特にロング走の際にアドバイスをもとに糖質と水分摂取のシミュレーションを行っていただき、これまで糖質と水分をいかに多く摂り過ぎていたかを認識していただきました。
レース本番は、雨降る一日となりましたが、気温が低く発汗量が少なくなることもあり、水分摂取については摂り過ぎないようにだけ気をつけ問題ありませんでした。また涼しい分、胃腸への負担が減ったことも幸いし、糖質摂取についても事前に設定した補給プランを実行し、結果、胃腸の調子を崩すこともなく、見事、初完走を果たされました。
ところで、アメリカスポーツ医学会が2016年に発表したポジションステートメント(公式声明文)「栄養と競技パフォーマンス」では、90分以上を要するスポーツにおいて、競技前にカーボローディングによってグリコーゲンの蓄積を促しておくことはパフォーマンスにとって有意義であるとされています。レース前48時間にわたる糖質主体の食事を摂ることが筋グリコーゲンの蓄積を促します。また、睡眠中に多く消費される肝臓グリコーゲンをレース直前1~4時間前の糖質摂取で補っておくことも有効です。このことは10時間以上に及ぶウルトラマラソンであっても非常に重要です。これらのアドバイスも今回のよい結果につながったのかもしれません。
レース前48時間で行うカーボローディングでは、1日(24時間)で体重1kgあたり10~12gの糖質主体の食事を摂ることが筋グリコーゲンの貯蔵に最適な量とされています(アメリカスポーツ医学会「栄養と競技パフォーマンス」、2016年)。また、レース直前1~4時間前には体重1kgあたり1~4gの糖質摂取が肝臓グリコーゲン蓄積を促すと考えられています。KODAエナジージェルには1個当たり約30gの糖質(マルトデキストリン)が含まれています。レース前のカーボローディングでもKODAをうまく活用することで、「グリコーゲンタンク」を満タンにしてレースに臨むことができます。この秋のレースに向けて、パフォーマンス向上のためにぜひ実践してみてください。 -
Vol.05疲労との闘い:エネルギー補給の基本
暑さが少し和らいできました。とはいえ、まだまだトライアスロンシーズンは続き、その一方でマラソンシーズンも近づいてきています。少しずつ過ごしやすくなる中ではトレーニングの効率も上がります。トレーニングの質を高めるためにも、しっかりとした栄養補給が必要です。今回はエネルギー補給の話題です。
運動中に消費されるエネルギー源の主なものは糖質と脂質です。運動強度や時間によってそれらが使われる割合は異なります。フルマラソンを4時間切るペースで走るランナーでは、全エネルギー消費量のおよそ7割から8割ぐらいは糖質によってまかなわれます。サブスリーで走る人になれば糖質消費の割合がさらに増え、5時間ぐらいで走る人では6割から7割ぐらいになるでしょう。
いずれの場合も、運動中に消費されるエネルギー源の主体は糖質です。しかし、無尽蔵と言ってもよいぐらい豊富な脂質と比較して、糖質の体内貯蔵量は限られています。筋肉や肝臓に蓄えられている貯蔵型の糖質、グリコーゲンと血中に存在するブドウ糖(血糖)だけです。このことから、運動中は糖質を補給する必要があります。
しかも、筋肉に蓄えられているグリコーゲンが消耗すると疲労感が強くなりパフォーマンスにも影響が出ます。したがって、できるだけグリコーゲンを節約する必要があります。ここに、疲労を抑えてパフォーマンスを維持するための糖質補給の意義があるのです。 これまでの研究では、1時間に60グラム程度の糖質補給が最もグリコーゲンの節約効果があったと報告されてます(Wallisら。2007年)。60グラムの糖質はコーダエナジージェル2個分に相当します。また、アイアンマンハワイに出場した59名のトライアスリートを調査した結果、平均で1時間当たり62グラムの糖質を摂取していたことがわかりました(Pfeifferら、2012年)。 しかも、フィニッシュタイムは糖質摂取量に反比例してよい結果を示しています。
このように、特に競技時間や運動時間が2~3時間を超えてくるエンデュランススポーツでは糖質補給が必須です。前回お話した水分およびナトリウム摂取と合わせて補給を考えることが大切です。栄養補給も競技の一部です(トライアスロンの場合は「第4」の種目です)。糖質と水分(ナトリウム)の摂取のタイミング(同時に摂ると胃腸にとって過大な負担になります)を考え、過不足ないように戦略を検討することが、疲労に打ち勝つエネルギー補給の基本と言えます。 -
Vol.04暑さに負けない栄養補給の基本
毎日、暑い日が続きます。こんな暑い日でもトレーニングやレースに取り組むアスリートのみなさんにはただ敬意を表するばかりです。トレーニングやレース中には、もちろん栄養補給は欠かせません。特に長時間にわたる場合、糖質、水、ナトリウムの適切な補給が重要となります。
これだけ暑いと、のどの渇き以上につい水分を摂取したくなるものです。5日間で225キロ走るウルトラマラソン(気温32~40度)におけるランナーたち(74名)の水分摂取量を見ると、平均して1時間に約730mlであったと報告されています(Costaら、2013年)。発汗率は不明ですが、30度を超す気温の下では発汗率が1L/時間を超すことはまれではありません。しかし、これらのランナーの約4分の1に体重増加が見られたことから、この水分摂取量でも過剰になる場合のあることがわかります。しかも、水分摂取1L当たりのナトリウム摂取量は約0.3gとなり、ナトリウム摂取量の不足が推察されます(必要量の目安は水1L当たり2g。コーダ・エレクトロライトパウダーなら5包程度)。実際に、42%に低ナトリウム血症(血中ナトリウム濃度が<135 mmol/Lの状態)が見られました。
前回も述べましたが、暑さの中での水分摂取は過剰にならないように注意するとともにナトリウムの摂取量にも配慮する必要があります。加えて、糖質摂取も行う必要のある場合などはさらに注意が必要です。糖質摂取には、糖質ドリンク(いわゆるスポーツドリンク)や糖質ジェル(コーダなど)が使われることが多いですが、ドリンクタイプのものだと必要な量の糖質を摂取するためには水分も摂らざるを得ず、水分摂取が過剰になってしまいます。その点、少ない容量で必要な糖質を摂取できるジェルタイプは有効です。
9名のトライアスリートに糖質ジェルを摂取させて、パフォーマンスへの効果を見た研究報告がありますが(Sarebanら、2016年)、この研究ではトライアスリートに糖質ジェル(27g)と合わせて水分摂取(300ml)も行わせています。この結果、胃腸系に不具合が生じたことが指摘されています。つまり、糖質ジェルと水分摂取を同時に行ったことによって、胃腸に過剰な負担をかけてしまったようです。
上述の水分摂取過剰とナトリウム摂取不足による低ナトリウム血症を防ぐと同時に、胃腸系のトラブルを回避するためにも、水分ととナトリウムの摂取量には配慮し、また糖質ジェルは水分と一緒に摂取しないこと(ただし、口をゆすぐ程度ならよい)が、暑さに負けない栄養補給の基本と言えます。 -
Vol.03水分補給の最強パートナー「ナトリウム」
運動には汗がつきものですが、暑くなってくるとその量(発汗量)が増えてきます。みなさんは、ご自身の運動中の発汗量をご存知ですか?これは簡便なテストを行うだけで推測することができます。まず運動前に体重を測ります。運動(1時間程度が望ましい)を行って、その直後に汗をしっかりとタオルで拭いてからもう一度体重を測ります。測定時はできればウェアを脱いで行うとより正確です。そして、運動前後の体重差を1kgあたり汗1Lに置き換えるとおおよその運動中の発汗量になります。もし運動中に何か水分を摂ったとすればその量を加えます(たとえば体重減少量が1kgで500mLの水分を摂ったのであれば1+0.5=1.5Lとなります)。最後に、運動を行った時間で割って1時間当たりの発汗量、すなわち発汗率(L/時間)を求めます。このテストを実際に競技が行われる同じような環境(気温、湿度など)と強度で行えば、競技中の発汗率を見積もることができるでしょう。
運動中は筋肉のエネルギー代謝が促進されることにより熱が作り出され体温が上昇します。これに環境からくる熱(暑さ)が加わり、さらに体温が上昇します。このとき、体温上昇を抑える働きとして発汗作用が起こり、汗をかくことによって体温上昇を抑えようとします。しかし、水分補給を怠るとこの働きが不十分となり、体温の上昇を抑えきれずパフォーマンスが低下するばかりか高体温症や熱中症を引き起こすことにもなります。また、水分補給不足(脱水)は血液量を減少させ、結果、心臓循環機能に負担をかけることになり、これもパフォーマンスを損なう要因です。さらに、脱水は胃の内容物の腸への排出を損なうため、エネルギー不足になることもあります。一方で、高濃度糖(8%以上)のスポーツドリンクや、食物繊維、脂質、たんぱく質などの含まれる飲料を摂ることが水分そのものの小腸での吸収を妨げることになりますので、水分補給を行っていても脱水になる恐れがあり悪循環を助長しますので注意が必要です。
水分補給量の目安は発汗量の2分の1から3分の2程度です。競技の場合、その量を練習中に試してみてお腹の調子が大丈夫か確認してから実践しましょう。また、水分補給には単なる水だけでなく、ナトリウム(食塩)を加えると小腸での吸収が促進されます。ただし、ナトリウムの量は多すぎても水分吸収を妨げますので、目安として1Lの水に加えるナトリウムの量は2000mg(食塩相当量約5g)以下にします(たとえば、コーダ・エレクトロライトパウダーなら5包以下)。水とナトリウムの最強コンビで水分補給は最適なものとなります。 -
Vol.02運動中に補給することが必要な栄養素とは何でしょうか? Part2
スポーツや運動において必要な栄養素は、まずはエネルギー源となる糖質です。それを補給することは、パフォーマンスに直結することからも競技戦略や運動内容と同等に考慮する必要があります。競技時間の長いエンデュランスポーツ(持久スポーツ)やチームスポーツにおいては特に重要です。
運動中には糖質以外にも摂取する必要のある栄養素があります。それは糖質同様に運動中に消費される水分とナトリウムです。水分とナトリウムは汗として体外に排出され、特に暑い環境の中では発汗量が多くなって体内の水分とナトリウムの損失が大きくなります。糖質は体内に蓄えられている分では限りがあり不足が生じるため外部から補給する必要がありますが(特に競技時間が2時間を超える場合など)、水分とナトリウムについては損失した分を取り戻すために摂取する必要があります。
その一方で、運動中に摂取すべきでない栄養素というものもあります。たとえば、日常の食生活では不可欠とはいえ、たんぱく質や脂質、食物繊維などが含まれている食品を運動中に摂取するとお腹の調子を崩したり、腹部の不快感や腹痛の原因になります。これは、暑さの中、あるいは競技または運動時間が長くなればなるほど深刻になります。最大で17時間を要するアイアンマントライスロンでは実に30%のトライアスリートがレース中、胃腸に深刻な問題を抱えていると言われています。冬場のマラソンでは4%程度と言われますから、いかに暑さと競技時間の長さが胃腸に負担をかけるのかが理解できますす。そこに消化に時間のかかるたんぱく質や脂質、食物繊維などを摂取することで、その負担に拍車を掛けてしまうことは明らかです。
いくら最適にトレーニングを行い最善のコンディションで競技に臨んでも、栄養補給戦略が不適切だとそれらの努力も台無しになりかねません。最高のパフォーマンスを発揮するためにも、今一度、栄養補給戦略を見直したいものです。 -
Vol.01運動中に補給することが必要な栄養素とは何でしょうか? Part1
運動中に栄養素を摂取する栄養補給の考え方には、「運動中に体内から失われる栄養素の補充」が基本になります。では、「運動中に体内から失われる栄養素」にはいったいどんなものがあるのでしょうか?
運動中のエネルギー源は、主に糖質と脂質です。前者は血中を流れるブドウ糖(グルコース)と、筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンです。後者は、同じく血中を流れる脂質(中性脂肪や脂肪酸など)と、皮下脂肪などの脂肪組織に蓄えられる中性脂肪が主なものとなります。同じエネルギー源でも、糖質は体内に保存されている量が少なく、脂質はやせている人でも十分に多く保存されているところが大きな違いになります。 つまり、運動中に体内からより失われやすいエネルギー源である糖質を補給する必要があると言えます。逆に脂質は豊富に存在するわけですから、あえて補給する必要はないと言えます。また、これらのエネルギー源が利用される際にはビタミンやミネラルが酵素の働きを助ける補酵素として使われますが、これらは普段の食事で過不足なければ補給の心配はありません。
エンデュランスポーツ(持久スポーツ)における糖質補給は今や常識と言えます。チームスポーツやパワー系スポーツでも試合の合間や競技前に糖質を補給する場面がよく見られます。マラソン参加者の4割以上がレース後半で「壁にぶち当たる(ヒッティングザウォール)」を経験していると言います。そして、その原因が筋グリコーゲンの枯渇にあることが知られています。
筋グリコーゲンは、筋肉に蓄えられている糖質(ブドウ糖)のことです。グリコーゲンは肝臓にも蓄えられています。これらは運動中にエネルギーを作り出すために利用されます。筋グリコーゲンは、その貯蔵量がある一定量を下回ると著しくパフォーマンスに影響を及ぼします。したがって、そのグリコーゲンを節約するためにも運動中に糖質を補給することがよいとも言われています。